はるひのの、はる

2014.01.17はるひのの、はる

加納朋子の久しぶりの新作です。
加納朋子は以前ここに書いたのですが、前作が「無菌室より愛をこめて」という白血病の闘病記でした。http://d.hatena.ne.jp/sumi0627/20120920ブログやツイッターをやってる作家さんではないので、今の様子がわからなくて陰ながら心配してましたが、新作がでてホッとしました。
この「はるひのの、はる」は「ささらさや」「てるてるあした」のシリーズの完結編だそうで、今回の主人公は、「ささらさや」のユウ坊が成長して「ユウスケ」になります。亡くなった人が見えるというユウスケが、河原で「はるひ」という少女と出会い、その少女と一緒に亡くなった人のいろんな思いを叶えていくという物語。「はるひ」がいったい誰なのか。ユウスケがはるひとした様々なことが、どうやって繋がっていくのかが少しずつ解き明かされます。
結末は切ないながらも、優しく穏やかに読む人の心を癒します
個人的には猫の話に涙しました。どうしても、犬や猫の話には弱い私です。
加納朋子の作品は、「壮大なエンターテイメント!」とか「驚愕のミステリー!」とかではないのですが、しっかりとした世界観と、優しい登場人物たちの切ない想いが、読後感良く、読んだ人も優しい気持ちにさせてくれます。「無菌室より愛をこめて」を読んで、彼女がどれ程家族に深く愛されているかがわかり、改めて彼女が描く世界の優しさの理由がわかった気がします。広げた風呂敷も(大風呂敷でなく、淡い色の素敵な風呂敷って感じ)ちゃんと始末して納得させてくれるのも好きです。
特に今回は、闘病後ということで、復帰を強く願っていたので、とてもうれしく読みました。これからも、きっとまったく健康な人のようにはいかないのかもしれません。大変な事がたくさんあるのかもしれませんが、素敵な作品、楽しみにしています。