「八日目の蝉」角田光代

2008.1.15八日目の蝉

本当はやらねばならない雑事がいろいろあるのに、本にはまってしまった今日一日
王様が読み終えたあとで「うーん、これは良かった」と言った一冊。この人の作品はたまたま正月に読んだアンソロジーで短編を2作読んでいた。でもそのときの感想は割と普通?な感じ。で、初めての長編。
よかったです!「本にはまってしまった一日」言えるくらいに。夕飯の支度をせねばならない時間になってもやめられないとまらない。ここはやさしい王様に甘えて、「えーい、読んでしまえ!」ってな感じでした。自分も活字中毒患者である王様は、「本に夢中で夕飯の支度が出来なかった」には甘いんです。
大きく1章と2章に別れているんですが、2章への転換が「お!そう来たか」という感じ。まったく突飛ではないのだけど、なんだか予想外だったんだな。1章も何度か場面が変わるのですが、それがちょうどいい。飽きさせず、書き足りなくもなく、程よいサイズにきっちり納まってる感じ。ミステリーではないけど、犯罪も少しからみ、人物の心理描写も上手く、内面を「えぐり出す」のではなくそっと取り出してあげているようなやさしさがある。読後感も決して悪くなく、穏やかな気持ちになれます。すごく完成度の高い作品だなーという印象。なのに、けっしてありきたりで型にはまっているのではなく、意外性と新鮮さも兼ね備えているという。
あらら?褒めすぎ?
これではどんなストーリーか全く不明だよね。簡単に言うと、「不倫相手の子供をさらって逃げる女の話」。言葉にしてしまうと「ええーっ?ひどくない?」な感じです。そう、やってることは極悪人?でも読むうちに彼女の気持ちに寄り添っている自分に気付く、そんな作品でした。