ドリームボックス〜殺されてゆくペットたち〜

2006.7.13ドリームボックス

この間の新聞記事に広告を載せた本「ドリームボックス」、実は拾い読みだったのだけど、やっと最後まで読んだ。内容が重いので、しっかり時間が取れる日に読みたかったのと、絶対泣くので翌日予定の無い日にしたかった。だって、最初の20ページぐらいをさっと読んだだけで涙が止まらない・・・
作者の小林照幸さんは大宅賞というノンフィクションの賞を取った、ノンフィクション作家。ただ、今回の「ドリームボックス」は特定の地区の愛護センターや特定の人物を書いた訳ではなく、主人公は架空の人物。でも、とても丁寧に取材がなされていて、真実に限りなく近い事は良くわかる。
実は、初めの20ページは凄く泣いたのだけど、読み終わってみると思ったより冷静だった。なぜなら、主人公のをはじめ愛護センターに勤務する人々が葛藤しながらも冷静なのだ。怒り、憤り、悲しみながらも、業務を淡々とこなさざるをえない現実。それが、感情的になりすぎず、「泣かせよう」としすぎず、しっかりと現実を見つめて書かれているのだ。だから、号泣はしなかった。でも、号泣より重いものを受け止めた。
愛護センターに勤務する人たちも、夢を持って動物を助けたくて獣医になったり、薬剤師になったりした人だって多いのだ。それがなぜ「殺処分」の業務を行わなければならないか?あまりの苦痛にやめていく人も多いと聞く。そうでない人は、淡々とこなすしかないのかもしれない。悪いのは彼らではない。勿論、法整備や行政(もっとトップ方の)に問題は沢山あるけど、実際辛い業務をせざるを得ない彼らが悪いのではない。なのに、「愛護センターというくせに、殺しているとは何事だ」と彼らに苦情が始終来るらしい。その繰り返しでは、センターの担当者が心を閉ざしてしまっても仕方ないかも。
悪いのは、自分の手を汚さずに捨てる人間だ。人に人を殺させるのにはゴルゴ13に頼んだら10万ドルだぞ。何で犬や猫相手だとタダで殺し屋を雇えるんだ?(殺し屋なんて言ったらセンター職員に失礼だけど)
作品では、ペットブームの裏、犬種の流行、安易な繁殖、避妊、去勢、ペットショップの問題、教育、マイクロチップについてまで、勿論行政の問題も、広くペット事情を取り巻く現実が冷静に語られていて、かなり評価できる。感情的になりすぎていないのが、かえって良い。
自分でも買ったけど、友達にもプレゼントしたけど、図書館にもリクエスしてみた。図書館だって「一冊購入」に変わりないし、沢山の人が読む機会が圧倒的に増える。お時間のある方は是非、各地区の図書館でリクエストしてみてね。財布を痛めず、啓蒙活動できます。