「アンダーグラウンド」今さらだけど地下鉄サリンについて考えた

2014.02.10.アンダーグラウン

アンダーグラウンド」、今更ですが読みましたのでその感想など。何だか書いていたら長文になってしまいました。
あの地下鉄サリンの被害者に、村上春樹がインタビューをして、まとめたものです。
地下鉄サリンは1995年の3月20日。この本が出版されたのは、それから2年後の、1997年3月20日です。
思えばもう19年も前の事件。でも、つい先日平田被告の裁判が行われていたので、また当時を思い出した人も多いかもしれません。

村上春樹がインタビューした62人(被害者は全部で3800人ほど)の被害者の方たちは、亡くなった方のご遺族や非常に重傷な方から、軽傷な方までさまざまで、今も(インタビュー当時)ほぼ寝たきりに近い状態で過ごしている方、 頭痛やめまいに今も苦しまれている方もいれば、逆に、何の後遺症も残っていない方もいました。
それは、車両のどこに乗っていたか、風上か風下か、ドアの近くか遠くか。そんな些細な違いによるものだったりしました。
また、ちょっとバスが遅れたために、いつもと違う電車に乗って事件に遭遇してしまった人。本当は休みの日だったのに、ちょっとだけ用事を済ませるため会社に向かったため被害にあった人、など被害にあった人と、合わなかった人の違いはほんのわずかな偶然でしかありませんでした。
インタビューにより、被害者の方のひとりひとりの生活がどんなものだったか。事件前と事件後で何が変わってしまったのか、変わらなかったのか。村上春樹は、事件報道では見えてこなかったそういうことを浮き彫りにしたかったそうです。
当時私はまだ独身。王様とはほぼ付き合ってるけど、まだ正式には返事をしてないような状態でした。
王様は小田急線の鶴川から千代田線と日比谷線で会社に通っていました。ほんの2〜3本前の日比谷線が、サリン被害にあったそうです。もし、あと10分王様が遅い電車に乗っていたら…と思うと。
インタビューを読み進めると、どの人も「何だか変だ」「息苦しい」「ちょっと臭い」と思ったそうです。しかし、煙が出るわけではなく、匂いも強烈な異臭ではなかったので「変だと思いながらもその電車に乗り続けていた」人が多かったようです。自分がそんな状況だったらやはり降りずに乗っていただろうと思うのです。
そして電車を降りた後、苦しく、あたりが暗く、目が痛い。何人も何人もの同様の症状を読んでいると、読んでいるだけで何だか目が痛くなって来る気さえします。
当時私は、働いていました。東西線と銀座線を使って通勤していたので、直接事件とは関係ありませんでした。あの日の朝も普通に会社に到着したのです。
今と違って、1人に一台パソコンがあるわけでもなく、スマホで情報が常に流れているわけでもないので、勤務時間になっても、会社では何も知らずに、打ち合わせ室で内部の打ち合わせなどしていました。
そこに家から電話がかかってきました。(携帯電話も無いので、会社の電話にかかってきて、○○さーん!お電話ですと呼ばれるわけです)母親が非常に心配そうな様子で「何だか地下鉄で大変な事件が起こったらしいけど大丈夫なの?」というのですがこちらは何も知らないわけで「何言ってんの?大丈夫だよ。今会議中だから〜」とちょっとイラっとしたのを覚えています。今思えば、あんな大変な事件です。地下鉄で通勤している娘が無事かどうか、親はどれ程心配したことでしょうか。昼ぐらいになって情報が回ってきて、どうやら大変な事件が起こったらしいということがわかったのですが。
当時、自分があの事件をどのように受け止めていたか、なぜか記憶がほとんど無いのです。当時は仕事が忙しく、新聞を読み飛ばしたり、ニュースステーションを見たりぐらいはしていましたが、世間のニュースより今やってる企画が商品化するかどうかの方が心配という感じ。今だったら、ニュースやワイドショーをずっと見ていたに違いないのですが。
読み終わって、思うことは様々あり、なんだか取り留めもつかないのですが、オウム真理教がしたことは、3800人もの人生を確実に変えてしまったということ。そして19年前のあの日、本当にわずかな時間の差で王様がその3800人の中の1人になる可能性は充分にあり得たこと。それから、事件後の被害者のケアがまったく充分でなかったこと。そして…オウム真理教の危うさに気付いていながら、この事件を回避できなかった理由など、語り切れない多くのことを感じました。
今さら、本当に今さらでしたが、知ることが出来て、考えることが出来て良かったです。あと、書き手が村上春樹だというのがやはりよかったです。とても読みやすく、被害者の方の人物像がリアルに感じられました。
長文にお付き合いいただきありがとうございました。
この本、図書館で借りて読んだのですが、読み終わった後、やっぱり欲しくなって結局買いました